8月8日(木)校長ブログ「Make it Kozy!」vol.99~たいそうな余談「心臓は美しい」~
「心臓は美しい」。ご存じの方も多いと思うが、日曜ドラマ『ブラックペアン』の主人公天城雪彦のセリフである。毎回、手術シーンが多く、画面いっぱいに心臓が大写しになるため、苦手な方もいらっしゃるかもしれないが、『〇沢直樹』以来、過度な期待もこめて、日曜劇場はついつい見てしまう。とは言えど、このドラマは、過去に『チーム・バチスタの栄光』や『ジェネラルルージュの凱旋』など、医療界を題材にした医師でもあり小説家でもある海堂尊氏の作品なので、原作としては申し分ない(誰が言うか?)。
ご覧になっていない方には伝わりにくいかもしれないが、心臓にかかる血管に血栓ができた場合などに、その詰まった部分を迂回する血管、いわゆる「バイパス」を取り付けるが、ドラマでは、その詰まった血管そのものを取り替える「ダイレクトアナストモーシス」なる高等手術が肝であり、主人公はその技術をもつ世界に一人の医師である。その他にも、「スナイプ」や「エルカノ」など、ロボットやAIによる手術方法の功罪についても取り上げられていて、フィクションといえど、なさそでありそな話である。
また、遡って、6月には、特に思うところなく、大泉洋主演の映画『ディア・ファミリー』を鑑賞した。重い心臓病を抱えた娘を助けるために、自分自身でカテーテルを発明、改良した実在の人物をモデルにしたストーリーで、泣いた。
さらに、同じ6月には、ある医療系大学に見学に行き、「臨床工学士」という資格を得られる大学だということ、人の命を救う力となる「臨床工学士」をめざす若者が増えているということを知った。
そういえば、テレビのCMでも「心房細動」がどうたらとか、いっていたなぁと思い起こす。このように、意識すればするほど、最近、「心臓」に関連した事に出会うなぁと、ほんのりシンクロを感じていたが、極めつけは、7月中旬に、元プロレスラーの高田延彦氏が、SNSで「心臓アブレーション手術が終わりました。同じ悩みを持つ方に、解決法の選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか」と投稿したことで、私の中で今は「心臓」がトレンドなのだと勘違いした。
実は、4月中旬に校医さんから「不整脈ですね」と診断され、原因が「心房細動」であると告げられた。「心房細動」とは、本来、心臓の右心房・左心房内で規則的に発信される電気信号が不規則になることだが、それにより、冠動脈が閉塞して「心筋梗塞」になったり、脳に向かう血管が詰まって「脳梗塞」になったりすることがある。と、当初は怖いことばかりインプットされたが、とりあえず、薬で症状を抑えつつ過ごした。以来、手首を親指で押さえてイマイチ整わない脈を確認することが常になった。
7月に入り、「ほな、夏休みになりますし、もうアブレーション手術しましょ!ここではできませんけど、今は簡単なんで・・・」と、女性の医師が平然とおっしゃるので、妙にこちらも一切不安がなくなり、「ほな、やりますわ!」と答えた。
「アブレーション手術」とは、足の付け根(または鎖骨付近)から入れたカテーテルを心臓まで通し、さらに右心房から左心房に穴を開けて通して、左心房にある4つの静脈の入り口を焼灼(しょうしゃく)し、不規則な電気信号に反応しないようにする手術のことだ。胸を切り開くことなく、「根治(完全に治ること)」できるのが最大のメリットだ。結果、入院4日、自宅療養2日で昨日、出勤した。
と、このように、「わけあって」の「わけ」を話すつもりは毛頭なかったが、高田氏のSNSに触発され、同じ病で不安になっている人もいるかもしれないと思って書くことにした(実際、私の身内、知り合い含めて同じ手術をした方が4人もいた)。実際はというと、麻酔による睡眠時間は5時間半。気が付けば終わっていた。手術自体はすでに2時間で終わっていたということで、看護師さんから、「ほんま、幸せそうにいびきかいてましたよ。」と言われた。実に恥ずかしかったが、幸せというのはある意味当たっている。「ダイレクトアナストモーシス」とまでは行かないが、「アブレーション手術」が確実で安心できる手術であることは確かなようである。
また、術後で何が一番嬉しいかというと、いつものように手首を押さえて脈を測ると、脈がドックン…ドックン…と「規則的」に動いていることに感動している。あらためて、担当の医師の方や看護師の方には感謝しかない。おまけに、これだけ「脈」と触れ合っていると、まだ見慣れたとは言い難い万博キャラクター「ミャクミャク」くんがなぜかとても親しみ深く感じてきた。とにかく、昭和ゴリラが手首を触ってニヤニヤしていたら、脈の規則性に幸せを感じている瞬間なので、見てみぬふりをお願いしたい。そして、こうも思っている。「私の心臓もきっと美しい」と。
たいそうな余談だが、さらっと読み流していただければ、幸いである。
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